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特別図解

電子基準点で見る日本列島の1年間の動き
2025年10月から2026年10月まで

国土地理院の電子基準点1084局について、2025年10月前半と、その1年後の2026年10月前半の座標を比べ、この1年間に地面がどちらへ何cm動いたかを地図に描きました。地図は+−ボタンやピンチ操作で拡大でき、局にカーソルを合わせる(スマートフォンではタップする)と数値が出ます。経緯や読み物としての解説は、2025年8月〜2026年8月で計算したブログ記事にあります。

比較した電子基準点
1084局
福江(長崎県五島)を固定点として表示
最大の水平移動(1年間)
88.1cm
千丁(熊本県八代市)北東へ。沈下34.7cm
青森・岩手の太平洋岸(1年間)
12.6cm
17局の中央値。東南東へ
自局(三島市)に近い局(1年間)
3.4cm
裾野2・沼津。西北西へ

全国のこの1年の動き

矢印と数値は、すべて1年間に動いた量です。2週間で動いた量ではありません。日々の座標は数mmずつばらつくので、始点(2025年10月1〜14日)と終点(2026年10月1〜14日)でそれぞれ14日分の平均をとり、その差を1年間の移動量としています。1年後の同じ季節どうしを比べているので、季節による数mmの上下変動は打ち消し合います。この1年間に起きた地震による動きも、補正せずそのまま含めています。

水平の矢印は、地図に菱形の印で示した福江局(長崎県五島市)を動かない点とした相対的な動きです(福江自体は地球全体の基準で1年に東へ3.1cm、南へ1.1cm動いています)。上下は地球全体の基準のままです。全国表示では矢印が重ならないよう間引いて描き、拡大すると全局を描きます。15cmを超える動きは赤い矢印で、長さを15cmで止めています。

地域ごとのまとめ

地域の範囲:北海道東部=東経143°以東・北緯42.5°以北、青森・岩手の太平洋岸=北緯39.5〜41.5°・東経141.3°以東、宮城・福島の沿岸=北緯37〜39°・東経140.8°以東、関東=北緯35〜36.5°・東経139〜140.8°、四国・紀伊の太平洋岸=北緯33〜34°・東経132.5〜136°、中国地方=北緯34.3〜35.6°・東経131〜134.5°。向きは東・北成分それぞれの中央値から求めました。

目立つ局

  • 熊本県の千丁は北東へ88.1cm、城南は北へ46.5cm。ほぼすべてが2026年7月28日の熊本地震の本震で動いた分です(下の節を参照)。
  • 青森・岩手の太平洋岸は、1年間で東南東へ9.5〜15.8cm。この1年に、青森県東方沖(2025年12月8日、M7.6)と三陸沖(2026年4月20日、M7.5)で大きな地震がありました(Mは気象庁の発表値)。たとえば岩泉1の15.8cmのうち8.4cmは三陸沖の地震の前後で動いた分で、その後の半年間にさらに5.7cm動いています。青森県東方沖の地震の前後では0.7cmでした。
  • 硫黄島1は西北西へ21.5cm、隆起28.4cm。火山の島で、他の局とは別の動き方をしています。
  • 大宜味(沖縄県)の隆起8.4cmは見かけの値です。始点の2025年8〜10月だけ座標が一時的に下がっており、その前後の座標はほぼ同じです。
  • 石下(茨城県)は沈下5.7cm。2026年4月から下がり始め、周辺の局は動いていません。原因は確認できていません。

局ごとの数値

局名局番号1年間の水平(cm) 向き1年間の上下(cm)緯度経度注記

見出しをクリックすると並べ替えます。注記「ばらつき大」は、始点・終点の平均に使った14日間のどちらかで上下の日々の値のばらつき(標準偏差)が12mmを超えた局で、上下の値は参考程度です。

熊本地震の本震で動いた量(2026年と2016年)

2026年7月28日の熊本地震の本震(M7.1、最大震度7)の前10日間と後3日間で、平均座標を比べました。1年間の全国図で熊本だけ矢印が突出しているのは、ほぼこの一瞬の動きです。同じ方法で2016年の熊本地震も計算しています。2016年は前震(4月14日)の前10日間と本震(4月16日)の後3日間の比較なので、前震と本震を合わせた変位です。

  • 2026年:千丁が北東へ87.3cm(沈下32.3cm)、城南が北へ44.6cm、泉が南南西へ17.8cm、大矢野が東北東へ13.1cm、球磨が南へ11.8cm。
  • 2016年:長陽が南西へ101.3cm(隆起24.4cm)、熊本が東北東へ78.5cm、菊池が北へ46.9cm、城南が北東へ44.3cm、泉が南へ31.2cm。
  • 両方の地震で水平3cm以上動いた14局で向きを比べると、差がいちばん大きいのは千丁の98°(2026年は北東、2016年は南東へ5.1cm)で、180°近く反対になった局はありません。最も長い矢印が、2016年は阿蘇側の長陽、2026年は八代側の千丁と別の局なので、図の印象は違って見えます。
局名2026年 水平(cm)向き上下(cm) 2016年 水平(cm)向き上下(cm)

2026年は90局、2016年は95局。どちらかで水平1cm以上動いた局を表に載せています。震央の星印は、2026年がP2P地震情報経由の気象庁発表値(0.1°単位)、2016年が気象庁「平成28年(2016年)熊本地震」のページの値(北緯32°45.2′、東経130°45.7′、M7.3)です。千丁の2026年の値は、国土地理院の解析(F5.1解)では87.1cm、2016年の長陽は同じくF5解で101.2cmでした(2026年9月に照合)。

伊豆・箱根周辺の年間速度

自局(AM.R38DC、静岡県三島市)の周辺30局について、2023年1月1日から2026年7月27日(熊本地震の前日)までの座標から、1年あたりの速度を求めました。約1年離れた日の組をすべて作り、その変化量の中央値を速度としています。水平は全国図と同じく、福江局を動かない点とした速度です(福江は地図の外にあり、縁の菱形の印が福江の方向を示します)。この方法は季節変動や一時的な段差の影響を受けにくく、2024年1月1日の能登半島地震による約7mmの段差は差し引いてあります。

  • 自局に近い裾野2は年32.5mm、沼津は年33.8mm、函南は年34.3mmで、向きはどれも西北西です。この1年(2025年10月〜2026年10月)の全国図の値(3.4〜3.5cm)とほぼ同じです。
  • 南東へ行くほど速く、伊豆半島南端の南伊豆1Aは年41.5mm、伊豆大島(大島3・大島4)は年46mm前後です。
  • 上下の速度は局によって年−10.6〜+3.4mmとばらつきます。同じ局でも解析機関によって最大で年7mm余り食い違う例があり(2026年9月に国土地理院の解析と照合)、上下の色は傾向を見る程度にとどめてください。
局名局番号水平(mm/年)向き上下(mm/年)自局から(km)

データと注意点

  • 座標は、米国ネバダ大学のNevada Geodetic Laboratory(NGL)が電子基準点のデータを解析して公開している日々の値(IGS20)です。国土地理院の局番号・局名に対応づけられた局だけを載せています。
  • 全国図の始点・終点はそれぞれ14日間の平均です。どちらかの期間で7日以上の値がない局は除いています。
  • 熊本地震の変位と伊豆・箱根の速度は、2026年9月に同じ方法で国土地理院の解析値(F5解・F5.1解)と照合し、水平は1cm以内(速度は相関係数0.996)でそろうことを確かめています。2025年10月〜2026年10月の全国図は、国土地理院の値との照合をしていません。
  • 水平に比べて上下は誤差が2〜3倍大きく、局ごとに±5mm程度の誤差がありえます。
  • 震源の位置・規模は気象庁の発表値(P2P地震情報経由)です。