地震計が拾っていたのは、海の波だった
- ⏱ 約3分で読めます - 👁 … views床下に地震計を置いて、計測震度をリアルタイムで計算するシステムを作っていました。ふつうに動いたので、しばらくデータをのんびり眺めていたんですが。
そしたら、なんか変なことに気づきました。地震でもないのに、約4分おきに規則正しくスパイクが出てる。
「なんだろう、これ。」
謎のスパイクを追いかけた
最初は身近なものを疑いました。冷蔵庫のコンプレッサー? 隣の家の何か? でも地震計は床下50cm、コンクリート基礎の上にあります。4km先の工場? そんなに規則正しく動くものでしょうか。どれもしっくりこなかった。
しかも夜になると、むしろ目立つんです。昼間の雑多なノイズが落ち着いたぶん、その信号がくっきり浮き上がってくる感じ。なんか気持ち悪い。
試しにスペクトログラムを出してみました。横軸が時間、縦軸が周波数、明るい色ほどエネルギーが強い、というグラフです。
そこに、ずっと光り続けている帯がありました。
0.1〜0.3 Hz あたり。昼も夜も、ほぼ変わらず。
マイクロセイズム、という言葉
調べていくうちに、「マイクロセイズム(microseism)」という言葉に行き着きました。
海の波が、地面を揺らしている。
最初「え?」ってなりました。海は観測点から20km離れています。そんな遠くの話が床下に届くの? ちょっと信じられなかったです。
でも、地震学ではわりと知られた話らしいんです。海洋の波浪が地殻に伝わって引き起こす常時微動で、世界中の地震計が常にこのノイズを拾っています。地震のない静かな夜でも、地球は揺れ続けている——海の波に揺さぶられながら。
波の周期と地面の揺れ
面白いのは、周波数の仕組みです。
向き合う波が干渉すると、倍の周波数で地面を叩きます(二次マイクロセイズム)。波浪の周期が14秒なら、地面は7秒周期で揺れる。
今回の観測データから計算してみると:
H_RMS 代表周波数: 0.15 Hz(周期 6.6秒)
推定される波浪周期: 13.3秒
これを、Open-Meteoという無料の気象APIで取れる駿河湾沖の波浪データと照合してみました。緯度・経度を指定するだけで過去の波浪周期が時系列で取れる、便利なやつです。
2026年5月25日夜のデータ:
- 卓越波周期: 7.2秒
- うねり周期: 6.1秒
うねり周期 6.1秒と、地動周期 6.6秒。ほぼ一致しました。うねりが直接地盤を揺らす「一次マイクロセイズム」として、きれいに説明がつきます。
謎のスパイクの正体は、駿河湾沖のうねりでした。
地震計は、海を見ていた
地震計って、地震だけを測るものだと思っていました。正直、買った時はそれしか考えていなかったです。
でも床下のセンサーは、海の波を感じていました。20km離れた海で波が打ち寄せるたびに、わずかに揺れていた。夜中に静かになるから目立ったんじゃなくて、夜中だからこそ「ちゃんと聴こえた」という感じです。
ちなみに、水平方向の揺れ(ENE・ENN成分)が主役で、垂直方向(EHZ)は低周波の感度が落ちるので参考程度です。計器応答を除去してから解析すると比較しやすくなるんですが、そこまでやってみて初めて「ちゃんと見えた」という感触がありました。解析コードはGitHubに置いてあります(earthQuake)。
マイクロセイズムは、嵐が来ると強くなります。遠くの台風の接近を、内陸の地震計で感じ取れる場合もある。
地震計を買って「地震を待つ」つもりだったんですが、地球はずっと動いていました。
計測震度を作ろうとして、思わぬものを見てしまいました。こういう「寄り道」が、一番面白いんです。
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