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Seismic Analysis · 2026-07-28 – 08-23(更新日: 2026-08-23)

令和8年熊本地震 統合分析

気象庁 地震情報 JSON API(P2P地震情報 v2/jma-quake、全国884件、熊本・周辺関連578件、本震2026/07/28 16:27から2026/08/23 07:07までの約26日間)を用いた、本震前後の地震活動の定量分析。

本震(2026/07/28 16:27)
7M7.1
深さ10km · 熊本県熊本地方
震度5弱以上の回数
6
本震含む・26日間累計
26日間累積検知数
578
熊本・天草・大分西部ほか
本震前24hの震源域地震
0
前震なし・突発型

余震の時系列推移(マグニチュード別、本震からの経過時間・対数軸)

M2 M3 M4 M5 M6 M7 M7.1 本震 +0h +1h +3h +12h +1日 +3日 +7日 +14日 +26日
本震(M7.1)
熊本地方
天草・芦北地方
大分県西部
その他(天草灘・阿蘇地方)

本震から2026年8月23日までの578件を発生時刻(対数軸)とマグニチュードでプロット(点の大きさもMに連動)。本震直後の1–2日でM4–6クラスが連続し、以降は緩やかに規模・頻度とも減衰している。

改良大森公式の減衰指数pは、日次集計・時間ビンいずれで回帰してもビンの取り方(代表時刻のオフセット)次第で0.6–1.0程度まで変動し、本震直後の急減衰が対数時間軸の原点付近に集中するため単一の点推定値としては報告しない。

気象庁は本震から2–3日は最大震度7程度への注意を呼びかけていたが、8月23日時点でも震度5弱以上の地震(8/1)や有感地震が散発しており、活動はまだ収束していない。

震源の空間的推移(日次内訳、26日間)

7/28
107
7/29
127
7/30
54
7/31
32
8/1
29
8/2
27
8/3
14
8/4
20
8/5
10
8/6
19
8/7
7
8/8
7
8/9
12
8/10
10
8/11
18
8/12
9
8/13
9
8/14
12
8/15
11
8/16
13
8/17
5
8/18
9
8/19
2
8/20
6
8/21
5
8/22
2
8/23
2
熊本地方
天草・芦北地方
大分県西部
その他(天草灘・阿蘇地方)

天草・芦北地方は本震+0.38h(M3.4)から即座に活動が波及。大分県西部は+16.13h(M3.0)に初検知(本震当日のみ)。震源間の直線距離は数十km規模で、同一断層帯(布田川・日奈久断層帯)沿いの連鎖とみられる(専門機関の正式評価は未確認)。

日次件数は本震当日107件・翌日127件をピークに、1週間後には1日あたり10–20件程度、3週間後には1日数件まで減少している。

発震機構解(近隣観測点による解析)

自局および近傍RS4Dの単一観測点波形からは発震機構は求められないため、防災科研F-net(広帯域地震計ネットワーク)が周辺の複数観測点から算出したモーメントテンソル解を用いた。P2P地震情報578件のうちF-netの解析対象(おおむねMw3.5以上)に該当する58件が時刻突合できたが、地図の可読性のためMw4.5以上の9件のみを表示している—全体のうち9/578件を示す図であり、震度5弱以上の一部を含む残りはF-net未収録、または図から省いている。

令和8年熊本地震の発震機構解マップ。本震Mw6.7を含む9個の地震球がいずれも縦4分割の市松模様(横ずれ断層型)で、熊本地方から天草・芦北地方にかけて分布する。

9個すべてが横ずれ断層型(すべり角が±180°付近)で統一されており、布田川・日奈久断層帯の走向(北東–南西)と整合する。2016年熊本地震も同断層帯の横ずれ型で、今回の一連の活動が同じ運動様式であることを裏付ける。震源位置はF-net解析値(P2P速報値より精度が高い)。

b値分析(Gutenberg–Richter則)

Mc(下限M)b値標準誤差n
M≥2.00.47±0.01552
M≥2.50.68±0.03414
M≥3.00.76±0.06201

典型的な内陸地殻内地震はb≈0.9–1.0。P2P地震情報は震度1以上を観測した地震しか収録しないため、M2.5未満はカタログが不完全(マグニチュード分布はM2.5にピークを持つ)—Mc2.5以上のb≈0.68を実態に近い値として参照し、Mc2.0の0.47は切断効果による過小評価とみる。b値低下と大規模地震発生の間に確立した予測関係はなく、参考指標として提示する。

震度5弱以上の地震一覧

時刻M震度震源
7/28 16:277.17熊本地方
7/28 16:294.55弱熊本地方
7/28 17:086.15弱天草・芦北
7/28 19:034.25弱熊本地方
7/29 22:195.85弱天草・芦北
8/1 21:474.75弱熊本地方

本震から4日後(8/1)にも震度5弱(M4.7)が発生しており、震度5弱以上の活動は本震当日だけで収まっていない。深さは0–10kmが570/578件(98.6%)を占め、ごく浅い地殻内地震(2016年熊本地震と同型)。

震源近傍観測点 AM.R6E01 の実測記録(震源距離約80km)

震源に最も近いRaspberry Shake公開観測点 R6E01(福岡県、緯度33.29°/経度130.95°)のFDSN公開データを取得し、本震の実波形を解析した。震央からの直線距離は約80km—気象庁の公式観測点でいえば福岡県久留米市(震度4)とほぼ同じ距離帯にあたる。

最大加速度(PGA、JMAフィルタ後)
24.3gal
3成分合成(ENZ+ENN+ENE)
計測震度(気象庁式)
3.40
震度3相当
STA/LTA最大比
67.3
閾値15への到達は明瞭
推定M(距離減衰式逆算)
5.7
公式M7.1±0.8程度の誤差域内
0 20 40 60gal 54.3gal(フィルタ前ピーク、16:27:44頃) 16:27:10 16:27:30 16:27:50 16:28:10 16:28:30

合成加速度(ENZ+ENN+ENE、フィルタ前)の80秒間。理論P波到達(震源距離80km換算で約13秒後、記録開始16:26:30を起点に16:26:43)はEHZ速度波形のRMSがノイズ比3倍を超える立ち上がり(記録開始+32.5秒)と大まかに整合するが、近距離のため主要動がP波初動を圧倒し自動検出は容易でない—近距離観測点特有の課題として記録する。

距離減衰の実測検証(R6E01 vs 自局R38DC)

観測点震源距離PGA計測震度
R6E01(福岡)80km24.3galI=3.40(震度3)
R38DC(自局・静岡)798km0.581galI=0.31(震度0)

距離約10倍でPGAは約42倍減衰。PGA∝1/Dnの実測べき指数はn≈1.62—司・翠川(1999)等の地殻内地震の標準的な距離減衰特性(n≈1–1.7程度)の範囲内に収まり、2観測点の実測データが物理的に矛盾しないことを確認できた。

公式発表との整合性

気象庁発表の福岡県久留米市(震源距離約60km、R6E01とほぼ同じ距離帯)は震度4。R6E01の計測震度3.40(震度3上限に近い)は、距離差・観測点固有のサイト特性(地盤増幅率の違い、Raspberry Shakeの簡易設置環境)を踏まえれば大きく矛盾しない。

推定Mは司・翠川(1999)距離減衰式の逆算で5.7—公式M7.1との差は、点震源近似(実際の断層破壊の広がりを考慮しない)や地盤増幅率の不確実性に起因する既知の過小評価傾向の範囲内。

前兆の有無

本震前24時間、熊本県熊本地方・天草芦北地方での有感地震は0件。全国でも2件のみ(和歌山県北部M2.5、鹿児島県薩摩地方M3.7)で、震源域そのものに前震活動は確認できない—2016年熊本地震のような前震–本震型ではなく、突発型

参考として、本震前38時間・6.7時間に約82km離れた鹿児島県薩摩地方でM4.2/M3.7が発生しているが、距離的に同一系列と断定する根拠は乏しい。

総合評価

01
発生様式は突発型。前震を伴わず、2016年熊本地震で「割れ残った」とされる布田川・日奈久断層帯の区間での活動と報道されている。
02
活動は本震当日のうちに天草・芦北地方、大分県西部へ拡大。断層帯沿いの連鎖的な活動域拡大とみられる。以降の26日間も震源域は熊本地方・天草芦北地方の2域が中心で、大きく広がってはいない。
03
本震から26日が経過した現在も活動は継続中で、収束したとは言えない。日次検知数は本震翌日の127件をピークに減少傾向にあるものの、8月に入ってからも1日数件–20件程度の検知が続き、8月1日には震度5弱(M4.7)も発生している。改良大森公式のp値はビンの取り方で0.6–1.0程度まで変動し、単一の数値で「標準的な減衰」と断定できる段階ではない。
04
b値はMc2.5以上で≈0.68。M2.5未満はP2P地震情報のカタログ完全性の限界(震度1以上のみ収録)により過小評価されている可能性が高く、Mc2.0の0.47をそのまま「低いb値」と解釈するのは適切でない。b値低下と大規模地震発生の間に確立した予測関係はなく、参考指標として提示する。
05
前震データの不在は、本震単独の直前予測が困難だったことを示す一例。薩摩地方の地震との関連は震源間距離(約82km)から見て断定できない。