静岡県・自宅地震計の観測記録
地震計が台風を
感じていた
2026年6月3日、台風6号が自宅に最接近しました。地震計のデータには、台風が来る前から何かが変化していました。
観測期間: 5月31日〜6月6日
観測点: 静岡県付近(R38DC)
センサー: RS4D 地震計
はじめに
地震計は「揺れの音」を聞いている
地震計は地震だけでなく、地面に伝わるあらゆる振動を記録しています。波、車、風……それぞれ異なる「周波数(揺れの速さ)」を持ちます。
4つの観測チャンネル
🌊 うねり帯(B0)
とてもゆっくりした揺れ(0.05〜0.3Hz)。沖合の波が海底を伝わって届く「マイクロセイズム」と呼ばれる振動。台風や低気圧が海を荒らすと大きくなります。
🫨 地震・河川帯(B1)
地震のP波・S波が主に通るレンジ(1〜5Hz)。地震が来るとここが突然跳ね上がります。川の流れも少し聞こえます。
🚗 交通帯(B2)
車や工事の振動(5〜15Hz)。昼間に少し増える傾向があります。
🌧️ 豪雨・風帯(B3)
激しい雨や風が直接センサーを叩く高周波成分(15〜44Hz)。強い雨のときに上昇します。
グラフの縦軸の単位「dB(デシベル)」は音の大きさと同じ対数尺度です。+3dBで揺れのパワーが約2倍になります。
全体像
6日間で何が起きていたか
5月31日から6月6日までの記録です。青いうねり帯(B0)が最も変動が大きく、台風の動きと連動しています。
グラフ 1 ── バンドパワーの推移(6日間)
うねり(B0)
地震・河川(B1)
交通(B2)
豪雨・風(B3)
停電・ネットワーク停止(データなし)
縦軸の目盛りはバンドごとに異なります。グラフにカーソルを当てると数値が表示されます。
📈 うねり帯がじわじわ増加していた
台風6号が近づくにつれて、
青いうねり帯(B0)が少しずつ大きくなっています。台風が遠くにいる段階から、海のうねりが日本の海岸に届いていた証拠です。
⚡ 6月3日に突然データが途切れた
グラフの6/3には
黄色い空白が2か所あります。朝(07:44〜08:28)は
停電、昼〜夕方(12:30〜19:25)は
ネットワーク停止でシステムが通信できなくなったためです。
6月3日のできごと
台風が来た日、地震計は何を記録していたか
停電になるまでの記録と、電気が復旧してからの記録を見てみましょう。
グラフ 2 ── 6月3日の1分ごとの記録(停電で途切れています)
うねり(B0)
地震・河川(B1)
停電(07:44〜08:28)・ネットワーク停止(12:30〜19:25)
停電区間(黄色)は実際のデータがありません。その前後の記録から台風の接近・通過を読み取れます。
グラフ 2b ── 6月3日の気圧・雨・風の変化(三島市富士見台)
気圧(hPa)
雨量率(mm/h)
最大瞬間風速(m/s)
停電・ネットワーク停止(データなし)
出典: Weathercloud / 三島市富士見台。停電中はweathercloudも記録停止(07:40〜08:10頃)。最低気圧 973.4 hPa は 12:10(ネットワーク停止の直前)。
💡 気圧グラフと地震計をつき合わせると
停電(07:44)の時点では気圧はまだ
981〜982 hPa で急降下の最中でした。台風の眼が通過して最低気圧
973.4 hPa を記録したのは 12:10——ちょうどネットワーク停止の直前です。停電直前の地震計のうねり帯急落は、この急激な気圧低下と同期していた可能性があります。
6月3日のタイムライン
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深夜〜朝
全センサー正常稼働
うねり帯はやや高め(台風が近い海から波が来ている)
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08:50
大阪府北部で地震 M3.7 ── 地震計が検知
この6日間で最も感度よく検出。台風とは無関係の出来事。
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07:43
うねり帯が急落
台風の眼の接近か、強風によるセンサーへの影響と推測される
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07:44
停電 ──── 記録が途切れる
台風6号が最接近。約44分間のデータが失われた
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08:29
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12:30
ネットワーク停止 ── 再び記録が途切れる
台風による通信障害。約7時間(12:30〜19:25)のデータが失われた
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19:26
ネットワーク復旧 ── 記録再開
全バンドが正常値に戻る
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深夜
完全に平常運転へ
翌日以降も引き続きうねり帯の増加傾向が続いている
面白い発見
海のうねりは夜中に大きくなる
6日間の記録を時間帯ごとに平均してみると、興味深いパターンが見えてきました。
グラフ 3 ── 時間帯ごとの平均値(停電を除く正常データ)
横軸は時刻(JST)、棒グラフが うねり帯(B0)の強さを表します
なぜ夜中に大きいの?
昼間は太陽熱で大気が活発になり、風向きが複雑になって「うねり」が打ち消し合うことがあります。夜は大気が落ち着いて、遠くからのうねりが整然と伝わりやすくなると考えられています。これは「
マイクロセイズムの日周変動」と呼ばれる現象で、世界中の地震観測点で見られます。
週間トレンド
台風が近づくにつれて波が育っていた
日ごとの最大値が5日連続で更新されています。台風がいる南の海から、先行してうねりが届いていたようです。
グラフ 4 ── うねり帯(B0)の日別推移
6/3 は停電の影響で最小値が低く表示されています
📊 最大値が5日連続で更新
5/31 の最大値
56.90 dB → 6/6 には
57.60 dB まで増加。3dBで約2倍のパワーなので、この期間にうねりのエネルギーが着実に増え続けたことがわかります。台風6号が去った後も梅雨前線の影響が続いているとみられます。
地震検出の実績
台風の中でも地震はちゃんとわかった
台風接近中も、この6日間に起きた地震の 91% を検出できていました。
✅ 検出できなかった1件の理由
停電中(07:44〜08:28)に地震が重なったケースは今回の記録では確認されませんでした。
🏆 この期間の最高スコア
6月3日 8:50 の大阪府北部 M3.7(深さ10km)は、自局から約200km離れているにもかかわらず、スコア(ratio)
54.0 という期間最高値で検出されました。浅い地震は遠くまで振動が伝わりやすいためです。
よくある疑問
Q & A
Q. 自宅に地震計? 普通の人も持てるの?
はい。RS4D という市販の地震計を自宅に設置しています。近年は数万円〜で購入でき、Raspberry Shake というネットワークにつないで世界中の観測データと照合できます。
Q. 「dB」ってなに?数字が大きいほど揺れているの?
はい。デシベル(dB)は「何倍か」を表す対数の単位で、+10dBで約10倍のパワーになります。この記録では 55〜57 dB の範囲で変動しており、差の2dBは約1.6倍のパワー差です。
Q. 台風が来ると地震計はずっとガタガタするの?
台風の影響は主に「うねり帯(B0)」というとてもゆっくりした振動として現れます。地震のような急激な揺れではなく、数日かけてじわじわと増えていく感じです。今回は停電で最接近時の記録が取れませんでしたが、停電前後とも異常な急上昇は見られませんでした。
Q. 停電中のデータはどこへ行ったの?
残念ながら失われました。停電(07:44〜08:28、約44分)とネットワーク停止(12:30〜19:25、約7時間)の2回、合計約8時間のデータが失われました。台風が最接近した時間帯の記録が取れなかったのは残念ですが、直前・直後のデータから台風の影響は読み取れます。